あなたはまぶたを閉じていればいい
※アニメ版の設定。共闘とは名ばかりの隷属を強いられている。魔物の子の名前も出る。全体的に注意。
──ある日、デュフォーが暗いダークグレーのワンピースを持っていた、夏用の薄手のミニドレス、かな。……きっと、お姉さんへの贈り物、だと思う。デュフォーはお姉さんのこと、……よく分からないけれど、とっても、だいすきみたい、だったから。喜んでほしくてお姉さんにプレゼントしようとしてるの、かも?
「それ、お姉さんにですか?」
と、ヤエがそうデュフォーに尋ねたら、嫌そうな顔でこちらを見てから彼は無言で頷いて、すぐに踵を返そうとする。
「あの、待ってくださいデュフォー!」
「……なんだ」
そう言って彼はまた嫌そうな顔をして、見下すようにこちらを見る。この人の目は、いつも冷たかった。
「あの、お姉さんは寒がりなんです……!」
「……それで?」
「だからあの、暖かいお洋服の方がいいかもしれません! あと、暗い色よりピンクが好きで……」
「それは、お前の方がオレよりもを知っていると言いたいのか」
──そう言ったデュフォーに、突然に睨み付けられてぞくり、と背筋が凍る。……この人の視線は、氷のように冷たくて、ひどくおそろしい。
「あ、の……ヤエはただ、その方が喜ぶって……二人もきっと、仲良くなれるって……」
お姉さんはいつも、本と同じ色、桜色のカーディガンを着ていた。暖かいカーディガン、よく似合っていたあのお洋服、お姉さんの学校の制服。……どうして、あの春の色がボロボロになってゴミ箱に捨てられていたんだろう。「ヤエは、えっと、その……」捨てられてしまったあのお洋服の代わりになるものを、お姉さんに着せてあげてほしくて、お姉さんは寒いのが苦手なのにって、それが只々心配で懸命に説得したつもりだったけれど、冷たい冷たいその人はヤエを一瞥すると興味なさげに廊下を凍て付かせて、結局は話も途中に姿を消してしまった。
──その夜、お姉さんに会っても良いと久々にゼオンからの許可が下りて、お姉さんのお部屋に行くと、こんこんとドアを叩く。
「……デュフォー……? おかえりなさい、もう、そんな時間……?」
「お姉さん、ヤエです! ゼオンがお話してもいいって!」
「……ヤエ?」
「入りますね!」
普段は鍵がかかっている扉を、ぎい、と押し開けると部屋の奥でじゃら、と硬い音が聞こえる。そちらに視線を向けると、ベッドの上で足首に繋がった鎖を気にしながらも、お姉さんがこちらを見ていた。
「お姉さん!」
久々に会えたことが嬉しくて、彼女の傍まで駆け寄るとぎゅっとお姉さんに抱き付いた。お姉さんを見上げてみると、彼女は寒そうに毛布にくるまっていて、その下には昼間デュフォーが持っていたワンピースを着ている。
「ヤエ……あたたかい……」
……お姉さんの声は少し震えていた。やっぱり寒いのかな、それになんだか前よりも細くなった気がするし、お姉さんの体は少し冷たくて、風邪をひいてしまわないか心配になる。此処はとても寒い。だから暖かくしてあげてとデュフォーに頼んでみたけれどやっぱりヤエのお話は全然聞いてもらえなかった。
「お姉さん、ごめんね……」
ヤエが謝るとお姉さんは泣いてしまう。……ああ、此処は本当に寒い、なあ。
──ある日、デュフォーが暗いダークグレーのワンピースを持っていた、夏用の薄手のミニドレス、かな。……きっと、お姉さんへの贈り物、だと思う。デュフォーはお姉さんのこと、……よく分からないけれど、とっても、だいすきみたい、だったから。喜んでほしくてお姉さんにプレゼントしようとしてるの、かも?
「それ、お姉さんにですか?」
と、ヤエがそうデュフォーに尋ねたら、嫌そうな顔でこちらを見てから彼は無言で頷いて、すぐに踵を返そうとする。
「あの、待ってくださいデュフォー!」
「……なんだ」
そう言って彼はまた嫌そうな顔をして、見下すようにこちらを見る。この人の目は、いつも冷たかった。
「あの、お姉さんは寒がりなんです……!」
「……それで?」
「だからあの、暖かいお洋服の方がいいかもしれません! あと、暗い色よりピンクが好きで……」
「それは、お前の方がオレよりもを知っていると言いたいのか」
──そう言ったデュフォーに、突然に睨み付けられてぞくり、と背筋が凍る。……この人の視線は、氷のように冷たくて、ひどくおそろしい。
「あ、の……ヤエはただ、その方が喜ぶって……二人もきっと、仲良くなれるって……」
お姉さんはいつも、本と同じ色、桜色のカーディガンを着ていた。暖かいカーディガン、よく似合っていたあのお洋服、お姉さんの学校の制服。……どうして、あの春の色がボロボロになってゴミ箱に捨てられていたんだろう。「ヤエは、えっと、その……」捨てられてしまったあのお洋服の代わりになるものを、お姉さんに着せてあげてほしくて、お姉さんは寒いのが苦手なのにって、それが只々心配で懸命に説得したつもりだったけれど、冷たい冷たいその人はヤエを一瞥すると興味なさげに廊下を凍て付かせて、結局は話も途中に姿を消してしまった。
──その夜、お姉さんに会っても良いと久々にゼオンからの許可が下りて、お姉さんのお部屋に行くと、こんこんとドアを叩く。
「……デュフォー……? おかえりなさい、もう、そんな時間……?」
「お姉さん、ヤエです! ゼオンがお話してもいいって!」
「……ヤエ?」
「入りますね!」
普段は鍵がかかっている扉を、ぎい、と押し開けると部屋の奥でじゃら、と硬い音が聞こえる。そちらに視線を向けると、ベッドの上で足首に繋がった鎖を気にしながらも、お姉さんがこちらを見ていた。
「お姉さん!」
久々に会えたことが嬉しくて、彼女の傍まで駆け寄るとぎゅっとお姉さんに抱き付いた。お姉さんを見上げてみると、彼女は寒そうに毛布にくるまっていて、その下には昼間デュフォーが持っていたワンピースを着ている。
「ヤエ……あたたかい……」
……お姉さんの声は少し震えていた。やっぱり寒いのかな、それになんだか前よりも細くなった気がするし、お姉さんの体は少し冷たくて、風邪をひいてしまわないか心配になる。此処はとても寒い。だから暖かくしてあげてとデュフォーに頼んでみたけれどやっぱりヤエのお話は全然聞いてもらえなかった。
「お姉さん、ごめんね……」
ヤエが謝るとお姉さんは泣いてしまう。……ああ、此処は本当に寒い、なあ。