ありふれた夢

 運命の日、日常の終わりは唐突に、本当に突然に訪れた。

「……来たか」
「……うん、私も感じた。今、ルーク達がネポスに居る」

 盤面は既に最終局面に傾き、終わりが近い、ということは、先日改めて、レボルトと互いに再確認したばかりでは、あったけれど。その日、ルーク達、地球のボーンファイターの皆がネポスの地を踏んだことで、ベントーザに続いて、ソキウスが彼等の元へと迎撃に向かい、……一方の私はレボルトと共に、静かにソキウスの帰りを待っていた。……静か、それは本当に、静かな時間だったように思う。まるで、最後の瞬間と呼ぶのに相応しいような、静けさに包まれた時間で、私はそのとき、それ以上は何も話せなかった。情けないことに、此処まで来て、……今、レボルトと言葉を交わせば、……幾許かの未練が、生まれてしまうような気がしてしまった、のだ。……もうすぐ、本当に、あと少しだけの時間しか、私はこのひとの傍に居られない。……それでも平気、大丈夫だと、そう思っていた現実が目の前に差し迫ってようやく、私は。……彼の夢の成就が楽しみでもありながら、永久とも刹那とも付かないその時間に、レボルトと何を話せば良いのかが、分からなくなってしまったのだ。今、彼と話しておかないと、後悔するかもしれない、でも、……最期に何か、彼に言いたいことはあるだろうか? と考えれば、思いつくのは、結局のところ、突き詰めればたったひとつ。私には、レボルトに未だ言っていないことがひとつだけ、あって。……でも、その気持ちにはもう、地獄まで蓋をしようと決めている。だから、もう、ぼんやりと、彼の横顔を眺めることしか私には出来なくて。フェニックスとグリフォンのボーンカードを見つめ、静かに、悪辣に微笑む彼を見つめていることしか、……最早、私に出来ることなんてなかったのだ。

「……今、戻った」
「へっ、土産もあるぜ」
「……ご苦労」

 やがて、ソキウスがグレゴリーとヴィクトールを率いて、気絶した翔悟……ドラゴンボーン、と、リーベルトを連れて戻ってきても、レボルトは、先程からずっと窓の外を眺めて、時折私に視線を投げかけるばかりで、彼等には目を向けようともしない。……それで、やっぱり此処が、今日が分岐点、最後の審判なのだと、私には分かってしまった。元々、レボルトは人と目線を合わせたがらないきらいがあって、でも此処まで極端なのは、……もう、取り繕う必要が無くなったからだ、と言う結論に他ならなかったから、だ。……今日、此処で。恐らく終わるのだ、全てが。……すべての日常は、今日を持ってリセットされる。……レボルトが未来を、得るために。全ては今日、破壊されるのだ。

「これで地球も終わりだな」
「まだです、地球人の残党どもを全て狩り出してきなさい」
「何ィ!? ふざけんじゃねえよ! お前らどんだけ扱き使ったら気が済むんだ!?」

 ……背後では尚も騒々しく、そんなやり取りが聞こえていたけれど、レボルトには最早、そんな口論ですらも些事でしかなく、ヴィクトールに宥められ、退室していった兄弟二人を振り返ることもなく、私は横目で兄弟を見送った後に、ちらり、とソキウスの顔を見る。……何の疑いもない、私とレボルトを、信用しきったまなざしだった。……分かっていたけれど、そういう物だと、割り切ったつもりだったけれど、……嗚呼、それでも、私は、存外。……ソキウスのことが、好きになってしまって、いたのだなあ、と。そう、思ってしまうのだけは、やめられなかったのだ。

「リーベルトが手中にある以上、脱出は出来ない。ドラゴンボーンも、遂に我等の手に落ちたな」
「……同志ソキウスよ、きみも出ていきたまえ」
「……何? 何故だ?」

 ……けれど、そうは、思っても。ソキウスに駆け寄ることも、共に部屋を出ることも、私には出来なかった。ソキウスは、私を対等な友人として扱ってくれた。ネポス第一主義の彼にとって、地球の小娘でしかない私を、ああも丁重に扱ってくれたのは、本当に彼にとって私が特別だったから、なのだろう。……そんな私が、彼に最後にできること、それは。

「……レボルト?」

 ……対等な友人として、彼も、レボルトの礎になる覚悟があって此処まで着いてきたのだ、と。そう、一方的に断ずることだけだった。ネポスの民を救うために、地球と其処に住まう民を犠牲にする。彼の信じたその道が、私たちの行く道が、地獄であることを知らなかったとは、決して言わせない。……どうせ、すぐに私も同じ場所に逝く。そのときは、幾らでも私を詰ってくれていいから、責めてくれていいから。……友人と呼んでくれなくても、いいから。……それでも、私にとっては。あなたは、大切な親友。これから、全てに裏切られたとしても、それでも。……私は、ソキウスを本心から、想ってるよ。

「……まさか、このようなところで行う気なのか? この星の未来にとって重要な儀式、終焉の結びを……」
「……出て行けと言っている!」

 レボルトの真意を知らないソキウスは、狼狽した様子でレボルトにそう尋ねるものの、レボルトの方は、……多分、これが彼にとっての、最後の慈悲だったのだろう。もしも、此処で黙って部屋から出ていきさえすれば、ソキウスはこれから起きる事態を知ることもなく、痛みもなく、苦しまずに、何も知らないまま全てを終わらせることが出来たのだ。……それを、きっと、世界は優しさとは呼んでくれないけれど、私には、それが、レボルトからソキウスへの、精一杯の友情のように思えてならなかった。しかし、ソキウスはレボルトの言葉には従わずに、ソキウスの態度により声を荒げたレボルトに、翔悟が目を覚ましたらしい。翔悟は慌てて立ち上がり、身構えるものの、レボルトは依然、何でもないことのように、横目で翔悟へと視線を投げるばかりだった。

「……おや、少し声が大きすぎたか」
「……レボルト! それに、も……!」
「……翔悟、大人しく寝ていたほうがあなたのためだと思うけれど」
「なんだと……!」
「やめたまえ、まともに動けはしないのだろう? コクーンとやらがなければ……」
「く……っ、お前たちは何をしてるんだよ! 終焉の結びって……何をやるつもりなんだ!」
「ほう……終焉の結びに気付いたか」
「それで、ネポスに来たわけね……」
「そうだよ! リーベルトさんに聞いた! 親父さん、二度と口にするなって言ってた、って! ネポスに災いをもたらすかもしれない、って!」
「何を言うか、地球の小僧が。終焉の結びとは、我らを始まりの魔神から開放し、ネポスの自由を手に入れるためのもの。そうであろう? レボルト」

 ……そう、ソキウスが訊ねた瞬間、……レボルトはソキウスを突き飛ばし、不意を突かれたソキウスは、思い切り背後の壁に背中を打ち付ける。咳き込み、困惑の眼差しでレボルトを、それから、私を見つめる彼に、……私は、思わず目を逸らしてしまっていた。

「ぐあ……っ! な、何をするんだ……!?」
「あ、あんた……! 仲間に何してんだよ!?」
「れ、レボルト……一体何を……? 同志である私に、何故……? 私がなにかしたとでも……?」
「……ふ、何もしていないさ。きみの仕事はもう終わっただけのこと。そう、もうきみは不要なのだよ、ソキウス」

 見開かれたソキウスの金色の瞳が、声が、震えている。何を言われているのか分からないのは、きっと当然のことで、……今更だけど、私は、レボルトの振る舞いと言動に狼狽するソキウスを見て改めて、……自分が地球の彼等に、東尾所長に、……ルークにした仕打ちの意味を、本当の意味で理解したような、気がした。幼馴染であるレボルトに、突然、突き放されて。もう不要だ、と。そう、突き付けられたソキウスが、……私が裏切りを告げた日のルークと、まるで同じ表情を、していたから、……私は、思ったのだ。ずっと、相互理解を怠って、コミュニケーションもまともに図らずに、いつしか距離が開いてしまっていた、私と幼馴染のルーク。……でも、多分彼は、……私のことを、信じてくれていたのだ、きっと。そして、私はそれでも、彼を裏切った。自分のエゴを理由に、彼の信頼を突き放して、私は今、此処にいる。……それでも尚、決して立ち止まらないという決意のもとに、……ルークにあんな仕打ちをした上で、彼を傷付けた自覚を、彼等が傷付いたことを理解しながらも、私は、……此処でソキウスをも、見殺しに、するのだ。

「……終焉の結び、小僧の言う通りだ。私は若き日より、常に疑問を抱いてきた……」

 そうして、高らかに演説をするかのように、レボルトは、彼の真意を語る。今まで、私しか聞かされていなかったその目的に、ソキウスと翔悟の表情は凍り付いて、……改めて私は、彼等と自分が違う生き物であることをも、実感した。……だって私、レボルトがその話をしてくれたとき、夢を打ち明けてくれたとき、ほんとうに、嬉しかったの。

「我らネポス人は、何故生まれながらにして始まりの魔神に従わねばならんのか。力を持ちながら、何故それを自らのために使うことが出来んのか。そんな私の問いに、応えてくれたのはケルベロスボーンだ。彼は星の核に匹敵する力を持ちながら、その力を危ぶむ始まりの魔神に、核への道を閉ざされていた。そして、同じ憤りを持つケルベロスから教えられた。すべてを終わらせる終焉の結びのことを」

 ……そう、私にとってその夢は、終焉の結びの存在は、あの日からずっと。……世界で唯一の希望のように思えて、仕方がなかったのだ。どうしようもなく、それだけが、……私にとって、いちばん、大切なことになってしまった。

「な……っ!?」
「すべてを、終わらせるだと!?」
「そう。それが真実だ。きみに話した、ネポスが始まりの魔神から開放され自由になるなど、すべては偽り」
「……!
「始まりの魔神など、この星にとって害悪でしかない。宇宙が始まったときから存在する、最大の老害だ!」
「……っ!」
「そして私は決めた、奴をこの世から駆逐すると……」

 そう語るレボルトの表情は、本当に晴れやかで、恐ろしいまでもの微笑みも、私には、彼が吹っ切れたように見えて仕方がなくて、そのとき私は、自分の心までもが凪ぐのを感じていた。……それも、その筈だと思う。彼が生涯で抱え続けた積年の恨みつらみを、本心を、レボルトはようやく、堂々と吐露するに至ったのだ。彼がそうして、穏やかで居てくれると、私も、同じ気持ちになれた。何かが致命的に欠けてしまっている私にとって、レボルトは、私を補ってくれる存在だった、から。

「始まりの魔神を……」
「駆逐……」
「三つの核のボーンを集め、惑星直列、終焉の結びを起こせば、宇宙は生まれた時の姿に戻る……」
「三つの、核の、ボーン……」
「……そして始まりの魔神に代わり、我自ら新たな宇宙の創造主となる! 神である我の絶対的な力により、理想の宇宙を作り出すのだ! ハッハッハッハッハッハ……!」
「そんなことをしたら、地球だけじゃなく、ネポスも……!」
「当然、消えてもらう」
「ええ……っ!?」
「……待て、ならばはどうなる? お前を信じて着いてきたのことも、お前は裏切るというのか!?」
「ああ……そんなことか。お前は本当に、俺とは相容れんな、ソキウス」
「何……!?」

 ばっ、と私の方へと向き直り、そのまま私の元へと駆け寄ると、ソキウスは私の腕を引き、レボルトから庇うように、私を彼の背に隠す。……本当に、お人好しだ、あなたって。私もまた、レボルトに騙されていたと、恋心に付け込まれていたのだと、……そう、ソキウスは思って、……彼は咄嗟に、私を、護ろうと、していた。

「そいつは正真正銘、俺の共犯だ。にはすべての真相を既に打ち明けている。騙されていたのはお前の方だよ、ソキウス。は全て承知で、お前たちを欺きながら俺と共にあったに過ぎん」
「……なん、だと……?」
「お前は道化だったよ、ソキウス。ま、我らの幾らかに関して言えば、お前の想像も的を得ていたかもしれんがな……」
「……本当、なのか、……お前は、レボルトと共に……宇宙を終わらせようと……?」
「……レボルトの言ってることは、本当よ。私はネポスに来てすぐに、レボルトから終焉の結びについて聞いた……それが、私にとっても希望だったから、彼の野望に着いてきたの」
「……っ、何が希望だよ!?」

 絶句し、まともに言葉も紡げないソキウスの代わり……だったかどうかは、分からないけれど、翔悟が、弾かれたように突然に、私に向かって大声で叫ぶ。緋色のその瞳は、震えていてもまっすぐで、……嗚呼、私は、ずっと。その目が、苦手で仕方がなかった。私の全てを見透かす赤い目に見つめられるのが不安で、不安で、怖くて、それで、此処まで逃げ込んで、それでも、……最後まであなたは、私の希望を否定するのだ。

「全然、分かんねえよ! 宇宙を全部消して、とレボルトだけが生き残って!? それで何になるっていうんだよ!? みんなを犠牲にしてもいいって本当に思ってるのか!? ルークも、東尾所長もみんな! 犠牲にして、それで……!」
「……それは、少し違うわ、翔悟」
「何が違うって……!」
「終焉の結びが成されれば、当事者であるレボルトとケルベロス以外は全て消える。……私も、例外ではないの」
「……え……」
「……待て、では、お前はまさか……レボルトに全てを捧げて、自分も死ぬとでも、そう、言うのか……?」
「そう。それが、私の希望。……私が居なくなっても、レボルトが生きているなら、それは、私の望んだこと、私の欲しかった世界だから……」
「……っ、馬鹿なことを……レボルト! 本当にそれでいいのか!? それがお前の望んだことなのか!? 地球も、宇宙も、ネポスも、俺も! お前にとっては、取るに足らないものだったのかもしれない……! だが、は違うだろう、だけは、そうではなかっただろう!」

 私の言葉を聞いた途端、声を張り上げてレボルトに向かって意を唱えたソキウスの表情は必死で、それに対するレボルトは、煩わしげな目で舌打ちをしながら、彼の言葉を聞き流している。間違っている、おかしい、考え直せ。そんな言葉のひとつひとつが、レボルトを否定する世界のすべてが、彼の逆鱗に触れていることを、私は知っていて。……嗚呼、もうだめだと、そう、思った。ソキウスは、もう、きっと、レボルトに見逃しては貰えない。誰にも、そうは見えなかったとしても、きっと、それでも、……レボルトにとって、ソキウスは唯一の友人だった、同志だった。そんな彼に、此処まで人格を、彼の根本を否定されてしまっては。……レボルトはもう、ソキウスを見逃せない。見逃してしまえば、自らへの否定を受け入れることに、なってしまう。

「……、俺の元へ戻れ」
「……うん」
「待て、……! よく考えろ! お前はレボルトのことを……!」
「……ソキウス、それ以上は、もう言わないで」
……!」
「……それは、言わないって決めたの。私はこれでいい、……これがいいの。……ごめんね、ありがとう、私のために、怒ってくれて、心配してくれて……それは、本当に嬉しかった」

 私を引き留めようとするソキウスの腕を、強引に振りほどき、私はレボルトの傍へと駆ける。勢い余ってその背に飛び込んだ私の身体を、軽く受け止めると、……レボルトは静かな表情で、懐からボーンカードを取り出し、そして、……ソキウスと目を合わせることも、最後まで、なかった。

「……レボルト! ネポスをも滅ぼし、を道連れにするなどと! やりすぎだ! そんな蛮行は許すわけには……!」
「……誰にものを言っている!」
「……っ!?」
「……消えよ」
「っ、う、わあああああああ!!」

 瞬時にケルベロスボーンを着装したレボルトの雷撃を生身で食らったソキウスの肉体が焼失し、……その場には、ウロボロスボーンのみが残っていた。……越えてしまったのだ、遂に、最後の一線を。……ソキウスが、死んだ。……レボルトが、彼を殺してしまった。ひらり、と床に落ちたボーンカードに向かって歩み寄る、自分のつまさきは、少し震えていて、目の前で起きた事態を、自分の心が受け止めきれていないことを、自覚せざるを得なかった。……それでも、平常心を装い、ウロボロスのボーンカードを黙って拾い上げたとき、……ばちり、と。指先に、何か違和感が走る。レボルトの雷撃の名残かとも思ったものの、それとは何処か、違う気がする。今感じた違和感を、レボルトに報告するべきか迷って、……ひとまずはこの場を制するのが先かと、私もレボルトに習い、ホワイトドラゴンのボーンカードを構える。

「……?」

 取り出したボーンカードは、何故かほのかに光り、熱を持っていて。その時私は確かに、もう片方の手に収まったウロボロスのボーンカードと私のボーンが、共振のような光を同時に帯びていたのを、目にしたのだ。……これは、一体? やはりレボルトに報告を、と。顔を上げる私よりも先に、翔悟が震えながら、声を上げる。

「……っ、仲間を、消した……?」

 目の前で行われた惨劇に、未だ、頭が追いつかないのだろう。レボルトから後ずさり、私へと視線を投げながら、翔悟は震える手で、ドラゴンボーンのカードを構えて、

「……話は終わりだ」
「……っ、」
「ドラゴンボーンを寄越せ。面倒なことは嫌いでね、……さあ、寄越せ!」

 ……けれど、レボルトの威圧感と、コクーンを持たない現状に、翔悟には、最早反撃の手立ては残されていないように思えた、……その時だった。

「さあ!」
「……くっそ!」
「……さあ!」
「……!? レボルト! 危ない!」

 廊下の奥から、微かに地響きのような物音が近付いていることに気付いて、私は咄嗟にボーンを着装し、レボルトを思い切り突き飛ばす。……そうして、その瞬間、屋敷の壁を叩き壊しながら、なんとバーリッシュが突っ込んできたのだった。崩壊した壁の下敷きになった私に対して、レボルトの被害はまだマシだったものの、……面倒なことに、なってきてしまった。バーリッシュと共に、ペルブランドまで駆けつけ、……恐らくは、彼等は翔悟とリーベルトの脱出の手引きを図る算段、なのだろう。……やがて、レボルトが瓦礫を吹き飛ばし、粉塵の晴れた向こう側には、既にボーンを着装した彼等二人が、立ちはだかっていた。

「……最後まで我の邪魔をするか! 老害の手先がァ!!」
「……行け! リーベルト!」


 ……戦闘開始の隙を突いて、脱出を図ったリーベルト、パンサーの空間の力により、ドラゴンボーンと翔悟を取り逃がしはしたものの、激昂したレボルトは、私の時間属性の力で、最早戦闘において圧倒的なアドバンテージを取れることもあり、一瞬でその場を制してしまった。崩落する屋敷、瓦礫の上で、レボルト、……そして、ケルベロスボーンは、ペルブランド、バーリッシュを踏みつけ、放り投げ、激しく咆哮を上げて。……私は、その傍で、彼と共に空の向こう、何処かで嘲笑って居るのであろう神を、見上げ、静かに目を閉じる。もう、私には、レボルトの声しか聞こえない。……この宇宙には、彼以外の何も、要らない。

「……始まりの魔神よ! 我はこの宇宙から! 必ずや貴様を排除する!」

 ……そうして、終焉は。その日、静かに幕を開けたのだった。 inserted by FC2 system


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