このつめたい色あいにつけた名前

「……動き出したか、奴め」
「……レボルト、急がないと」
「分かっている、……追うぞ、ドラゴンを」
「……うん」

 崩落した瓦礫の山の上、手に握ったボーンカードを通して、確かに、奴の……始まりの魔神の気配を感じた。隣に立つも、それは同じだったようで、神妙な顔で俺を見上げると、時間がない、と。は静かに、そう言うのだった。時を司る能力を操るお前が、時間がない、とは妙な話だが、の言うことには一理ある。間抜けな魔神も、流石に俺の凶行に気付いたようで、恐らく、奴はこの宇宙ごと俺を潰しにかかる腹積もりなのだろう。……ならばこそ、早急に成さねばならんのだ、終焉の結びを。

「……行くぞ、
「……はい、レボルト」

 静かに頷き、俺に続いたにとっては、下手をすれば、俺以上にこの場所に思い入れもあったのかもしれない。ネポスへとこいつが渡って以来、まともに外を出歩く自由もなく、半ば軟禁に近い形で、は俺の屋敷に留まり続けていた。……俺の知らないうちに、この場所で得たもの、感じたものもあったのだろう。それが俺にとって必要なことでなければ、は報告などしないが、それでも。……にとっては、必要なこともあったはずなのだ。例えば、……ソキウス、と奴との関係性が、如何に強固だったのかは、最後にソキウスが、俺からを護ろうと背に庇ったあの行動だけでも、嫌と言うほどに理解できる。……だが、それでもは、ソキウスの手を離して、俺を取った。如何に得難いものであっても、俺よりも優先する事項などなにもないのだと、こいつはそう言ったのだ。

『……レボルト! 本当にそれでいいのか!? それがお前の望んだことなのか!? 地球も、宇宙も、ネポスも、俺も! お前にとっては、取るに足らないものだったのかもしれない……! だが、は違うだろう、だけは、そうではなかっただろう!』

 ……そんなこと、お前に言われずとも、俺にだって分かっているさ。今まで知りえなかった、たった一人を惜しい、と感じたこの想いの意味には、俺とて、とっくに気付いているのだ、ソキウスよ。それでも、その唯一無二と巡り合わせたのがこの夢であればこそ、尚更、それは立ち止まる理由にはなり得なかった。……そうだな、もしも。俺が作り直した新世界に、俺が必要としたものを作り直せるのならば、俺は真っ先に、を呼び戻そうとすることだろう。……だが、それを此処で立ち止まる理由には、到底出来んのだ。俺が全てを諦めれば、も当然、何もかもを諦めざるを得なくなる。こいつにまた、出会った当初のような、絶望に満ちた顔をさせることなど、出来るというのだろうか。答えは、否である。死んでいるのとまるで変わらない、植物のように緩やかに死へと向かって延命だけを続けるのが、どれほど耐え難い屈辱であるのかを、俺は誰よりも知っている。……だから、決めた。苦しみ続けるくらいなら、お前がそれを受け入れるのならば、俺は世界ごと、お前を殺して。……お前の屍を、新世界の最も貴き礎としよう、と。


「まさか、お前たちを送ることになるとはな……」
「……ほう? 何処に送るつもりだ?」
「レボルト……! ……!」
「……翔悟、逃げても無駄よ」
「おい! 急げよ!」
「……っ!」

 あの騒ぎでは、逃げる、と言ったところで何処まで行けるかなど、たかが知れていて、ボーンの気配を手繰っていけば、ドラゴンの姿はすぐに見つかった。そうして、俺とが現れたことで焦った連中は、何を思ったのか、ウルフとタイガーの兄弟のみを何処かへと転送する。……まあ、そんなもの、最早些末な問題に過ぎんがな。

「……フン、あんな者共が何処へ行こうと構わん。ドラゴンボーンさえ手に入ればなァ!」
「……っ、」
「ほう? 今度はお前たちが逃げるつもりか」
「リーベルトさん……! 駄目だ! 俺達がこの人を……終焉の結びを止めないと!」
「……フ、」
「……お前を父上のようにはさせん」
「え……」
「ドラゴンボーンは……翔悟は私が守ってみせる! 逃げ延びる……宇宙の果てでも、何処まででも!」
「……若い二人が、逃避行というわけか。だが、逃げ切れんぞ?」

 ドラゴンを背に庇うように前に出て、ボーンカードを構えるリーベルトの姿を見て、……一瞬、隣に立つの表情が曇る。「……?」その様子を妙に思った俺の呼びかけにも応じず、そのままは一歩前に出ると、ボーンカードを手に、リーベルトを睨みつけ、……そして、きっぱりとした口調で言い放ったのだった。

「……リーベルト、あなたが逃げるつもりなら、私が時間を止めて、それを阻む」
……! お前は、何故そんな男に従って……!」
「……翔悟を護る? 良いわよ、私の覚悟のほうが上だって分からせてあげる。あなたがその気なら、私は、レボルトを護る。空間の力なんて、時間の力の前では取るに足らないもの……このひとの邪魔はさせない、私が、レボルトの夢を護るわ」

 ……全く、大それたことを言うものだ、と。そう、思った。この俺を、護る、だと? そんなものは不要だ、と。今までの俺ならば、……その言葉を口にしたのがお前ではなかったのならば、俺は、瞬時にそう言ったことだろう。俺の真意を知った上で尚、俺を庇い立てする人間など、きっと、この世界に独りしか居ない。……それだけでも、その言葉が、お前の行動が、どれほどの重みを伴っていたのか分かったものではない、というのに。自分が犠牲になることなど承知の上で、この期に及んで、お前は言う。俺の邪魔はさせないと、俺には指一本触れさせんと、他者の覚悟など蹴散らしてやると、そう、言うのだ、お前は。……ならば、やはり、俺は。

「……その通り、我々二人から逃げ切れるとでも思っているのか? 全エクェスを使い、何処まででも追ってやる。……いや、お前たちが逃げれば、即刻地球を消してやるわ。この俺の手でな!」
「なんだとぉ……!」

 ……ああ、やはり、この者にだけは応えてやらねばなるまいよ、ソキウス。認めよう、は俺にとっての唯一無二であると。認めよう、俺はこの人間を、隣人として心の内側へと迎え入れてしまったと。認めよう、……俺は、を愛しているのだと。最早、他者の理解などは欲さんとも。この結論が異常だと、間違っていると、誰から何を言われようとも、俺も、こいつも、止まらんとも。得難いからこそ、俺はこいつを殺すのだと、そんな自らの異常性を俺は甘んじて認めよう。……そして、その犠牲が無駄ではなかったことを証明するために、俺は自らが正道であったと証明してやる。俺が王道で、この結末を認めん貴様らこそが邪道であったと、そう理解させてやろう。

「レアメタルに目覚めしドラゴンボーンなら感じたはず、始まりの魔神が動き出したことを!」
「……っ!」
「……時間がないの、無駄な抵抗はやめて、翔悟、リーベルト」
「そう。奴はもうじき現れる、それまでに成さねばならんのだ! 終焉の結びをなァ!」

 ……ならばこそ、よ、お前の奉仕に、信頼に報いるためにも、俺は成そう。

「……さあ、俺に渡してもらおうか、ドラゴンボーンを!」

 ケルベロスのボーンカードを構え着装した俺と、ホワイトドラゴンのボーンを着装したが、ドラゴンへと静かに歩み寄る。は地球由来の人間ではあるが、既にコクーンがない状況でもボーンを着装し、エクェスと変わらん動きが可能なまでに成長していた。……曲がりなりにも、本人が知らずとも、ホワイトドラゴンは星の核。そのを伴った上に、グリフォン、フェニックスを掌握した俺に対して、パンサーボーンは、未だアイアンへの覚醒すら果たしていないホワイトボーンの状態で、この状況、抵抗など無意味なのは明白だった。……だが、しかし。

「……っ、間に合ったか!」
「なんのつもりだ!」
「……! レボルト! ヴィクトールはコクーンを持ってる……!」
「……チィッ! 無駄な抵抗を!」
「こういう、ことだ!」

 ……あと一歩、というところで。グレゴリー、ヴィクトールが空間属性の力で帰還を果たし、の言葉通りに、瞬時にその場に、連中のフィールド、……リベレーションコクーンが、構築されていた。コクーンの内部である低重力空間に放り込まれた俺とは、空中で体勢を整え、着地を果たすと眼下に連中を見下ろす。……全く、時間がないというこんなときに、何処まで俺を怒らせてくれる? 事態が長引くほど、状況は悪転するというのに。

「……レボルト?」

 ……その上、これ以上と共にあっては。とうに焼却した今生への未練が、生まれかねんというのに、腹立たしいものだ。

「……これが、新しいコクーン……リベレーションコクーンの最終形態……」
「……ウルフ、タイガー! 今日はドラゴンボーンに尻尾を振るのか? 所詮は地球人、やはり劣等星人だな!」
「おうおう、悪口には慣れっこだ!」
「コクーンと言ったな……これを運んだのも貴様らか」

 ……長引かせる理由は何処にもない、一瞬で終わらせてやる。稲光の轟くコクーン内部で、……俺はそのとき、如何に早く、苦しみながら連中を殺してやるかばかりを、考えていた。

「おおー怖! 相変わらずスッゲー威圧感! ……さて、どう切り崩すかな」
「……俺は、母さんとの約束を護らないと……絶対に帰らなきゃ!」
「先走んなよ、ドラゴン!」
「え……」
「貴様などどうなろうと一向に構わんが……」
「ドラゴンボーンがクラッシュしたら、チェックメイトだ」
「地球は消滅する……」
「……分かってるよ! ケルベロスからは……それに、からも、前よりも段違いに力を感じる」
「今のケルベロスは、フェニックスボーンも身に着けているのだ……あちら側には、厄介な時間の力がふたつ。一筋縄では行くまい」
「……ウルフ、パンサー! 俺を中心にラインを組むぞ!」
「はいよぉ!」


「……レボルト、私が補佐する」
「……ああ。いちいち指示は出さん、お前の采配で動け、……背は任せたぞ、よ」
「……任せて。あなたの信頼に、必ず応えてみせるから」

 コソコソと作戦会議をして、ラインを組もうと画策する連中と同じような手は、我らには必要ない。そんなものがなくとも、俺は魔神をディセント出来る。逐一合図など送らずとも、は的確なタイミングで時を操り、俺に有利なフィールドの展開が出来る。連中が雷の魔神を呼ぼうとラインを組む瞬間、がホワイトドラゴンの時間の力を活用し、……一瞬、時を止めた。その間も自由の利く俺は、横から奪うように、ケルベロスを中心にフェニックス、グリフォンのボーンカードを利用し、単独でラインを形成、雷の魔神のディセントを果たし、一気に猛攻を畳み掛けた。

「……ッハハ!」
「ぐあああっ!」

 雷の魔神が撃ち落とした雷撃は、ものの見事に連中に命中し、瞬時に、奴らのボーンが赤く熱を持つ。……これは本当に、遊んでやるまでもないな。一瞬で、片が付くことだろう。何しろ、此方側には圧倒的なアドバンテージを持つ時間属性の力、それも星の核レベルのボーンが、二体も揃っているのだ。援護に回るは、連中と常に一定の距離を保ち、簡単には近づけん。そもそも、俺を越えねばには辿り着けない。俺が、近付けさせない。俺とのツーマンセルであれば、そのように動くのが一番有効的であることは、とて理解しており、仮にホワイトドラゴンの時間停止の限界点に到達したならば、その時は俺がフェニックスの力を用いればいいだけのこと。全く持って、死角がないのだ、この布陣には。……連中が、哀れに思えてくる程にな。

「ッハハハハ、ハハハハ……!」

 三種のボーンを掌握した今、俺は一人でラインを組むことも可能。此方が二人だと分かっているから、連中は俺が魔神をディセントしてくることはないと思っていたのだろうが、とんだ的外れだ。に任せた役割は飽くまでも、俺の補佐。正面から突っ込むだけが能ではないと、は理解している。……こうして、何者かに背を預ける日が俺に訪れるとは、夢にも思わなかったがな。存外、頼もしいものだと、今は思うとも。

「……なにっ!?」
「貴様らが呼びたかったのは、こいつか?」
「雷の魔神を……!」
「一人で、ディセントだぁ!?」
「グリフォン、フェニックス、ケルベロス! 三体のボーンを着装したこの俺は、ラインを組まずに魔神をディセントし、その力を存分に引き出せるのだ! これぞ究極の結び!」
「……っ!」
「喰らえ! 雷帝の裁き!」

 雷の魔神の雷撃に続き、それよりも遥かに強力な、ケルベロスの雷が連中の身を焼き焦がす。決死の回避行動に出たところで、の時間停止からは逃げ延びることも叶わず、立て続けの雷鳴に、連中は一瞬で虫の息だった。

「……そぉら!」

 只でさえ時間を止められ行動を制限された上で、雷撃が降り注ぐ中を、それでも必死にちょこまかと走り回るウルフに先んじて、今度はグリフォンを中心に、俺は風の魔神をディセントする。グリフォンのレッグパーツに風属性の力を纏うと、悔しげな声を上げながら突っ込んでくるウルフに、俺は勢いよく攻撃を叩き込んだ。

「……なんでもありかよ! けどな!」
「ストームセイヴァー!」
「……ハウルオブ、シャドウ!」



 ……そうして、幾らか連中と遊んでやった後に。俺と、そしてドラゴンの身を、光の粒子が包んだ。……忌々しい、この感覚は、間違いなく、

「……まただ!」
「……始まりの魔神の動きが、激しくなってきたか……」
「……レボルト、そろそろ終わらせないと。私が、前みたいに時間の魔神を従えて……」
「……いや、それはまだだ」
「でも、」
「……それは、最後の手段に取っておけ。あの力は、お前にとって……」

 ……確かに、ホワイトドラゴンがレアメタル化を果たせば、一瞬で片が付く。只でさえ反則級の能力である時間属性の力が、レアメタル化により輝きを増せば、……が補佐から、前列に加わったのならば、最早、文字通りに時間は要らなくなることだろう。実際、ホワイトドラゴンが再びレアメタル化を果たす可能性は、十分に有り得ると解析の結果、既に答えを得ている。……だが、俺が始まりの魔神の逆鱗に触れた今、魔神の力に下手に手を出すのは、余りにもリスクが高すぎる。只でさえ、前回とては酷いダメージを負ったというのに。……ああ、そうだとも、認めてしまおうか、これも。……確かに、俺がに補佐を任せたのは、その方が戦う上で、効率がいいからだ。

「……? レボルト? どうしたの……?」

 だが、それは同時に、……こいつに前線を任せれば、必ず無茶をすると分かり切っていたから、だった。どの道、もうじき全てが終わるならばと、前に出ることさえ一度許してしまえば、間違いなくお前は、生き急ぐ。……そうだ、最後まで、生かしておきたかったのだ。俺は、お前を。お前を死なせるのは最後でよい、と。そう思って、……レアメタル化など、お前に二度とさせたくはないと、俺は、そう、思ってしまっていた。

「っ、てめえの狙いは終焉の結び! たいそれた野望に、魔神様もお怒りだなぁ!」
「ケルベロス……お前は始まりの魔神もろとも、この宇宙を消し去ろうというのだな。新たな宇宙を想像し貴様が牛耳るために……!」
「……ハッハッハ! さすがは小狡いスパイ兄弟、その通りだよ。自分たちも消える羽目になるとも知らず、俺が目的を果たすために、よく働いてくれたな。まるで、コマネズミのようにチョロチョロと……礼を言ってやりたいくらいだぞ」
「チッ……! てめえ……!」
「評議会の連中もまんまと騙され、俺のために尽くしてくれた……ネポスに永劫の平和が訪れると信じてなァ……」
「……っ!」
「ユニコーンとバジリスクは、未だに地球のボーンと戦っているはず……自分たちの手で宇宙を終わりに導いているとも知らずに……ッフ、愚かなものよ!」
「何……!?」
「ちょっと、あんた! 自分を信じてくれた仲間に対してそんな言い方あるかよ!」

 互いのボーンの共鳴により生み出された精神空間、その場で、連中は俺を糾弾せんと食い下がる。最早俺を非難したところで、何の意味も成さぬと言うのに、愚かなものよ。

「……は、あんたの為にあんたに味方するって言った!」
「……ハァ?」
「……翔悟。それが、何だって言うの?」
「それって、あんたはのことも利用した、ってことだろ!? あんたのために自分の命まで投げ出そうとしてるを! あんたは平気で踏みにじれるのかよ! も! そんなことのためにその人に付いたのかよ!?」

 ……だが、的外れ極まりない、ドラゴンのその言葉は。存外、俺を苛立たせた。

「フン……貴様らも……俺に騙され使われていたと知り、さぞ腹立たしかろう?」
「まあな……だが俺達がムカついているわけは、それだけじゃねえ……」
「……?」
「……ソキウス」
「……あ?」
「俺達が許せないのは、お前が仲間であるソキウスの命を奪ったことだ!」
「……っ、あなた、たち……」
「嫌いなんだよ、そういうの!」
「嫌なもんを思い出させやがって……信じた仲間に裏切られるとか、好きじゃねえんだよ!」
「……は、お前の命令に従って、研究所を吹き飛ばし、仲間を裏切った! それも、お前を信じていたからだろう!」
「……! それは、私が……! 自分の意志で!」
「うるせえ! それでなんだ!? てめえはソキウスだけじゃねえ、もこれから始末しようってんだろ!? てめえだけは、ぶっ飛ばさねえと気がすまねえ!」
「……分かったような口を、利くなァ!」

 貴様らに、何が分かる。俺の心など、真意など、所詮貴様らには理解できん。……それを理解できるのはたったひとり、だけだ。そのと、俺とが決めた計画を、結末を、阻もうとするものは全て邪魔だ、否定するものなど、全て燃やしてしまえ! ……我らを否定するもの、何もかも、八つ裂きにして、命乞いをさせてやろう。

「ハウルオブシャドウ!」
「ガウジング……クロー!」
「……雷帝の裁き!」
「どわっ……! ぐおああああ!」
「くっ……ぐああ!」
「っ、パンサー!」
「邪魔するな!」
「ぐあ……っ!」
「っ、すまない翔悟……護ることが出来ずに……」

 雷撃が直撃し、ウルフとタイガーは後方に吹っ飛び、コアがクラッシュしたパンサーは、ボーンカードを残してコクーンから弾き出される。それを見て、ドラゴンは足元から崩折れるように、その場に立ち止まった。

「リーベルト……さん……っ」
「父親の元にでも逝ったか? ハッハッハッハッハ……!」
「……ケルベロス……!」

 心が折れたかと思ったが、再び立ち上がったドラゴンは未だ、戦う意志を捨てんらしい。雷に支配されたフィールドに、轟々と炎が燃え広がる。……そうして、やがて。ドラゴンの意志に呼応するかのように、火の魔神の実体が、姿を見せた。……全く、本当に魔神どもは気まぐれなものだ、此処まで追い詰められねば、手を貸すことも無いとはな。

「……火の魔神か。来い!」
「行くぞぉ!!」

 レアメタルの光に包まれるドラゴンボーンを前にして、宇宙の終わりの時は近い。残るは、ドラゴン一人。そして此方側は、俺との二人が居る。……嗚呼、ようやくだ。待ち望んだ瞬間は、目の前にある。俺は、貴様たちを許さない。俺とが決めた終末を受け入れぬものなど、……炎よりも熱い雷を持って、全て焼き殺してくれよう。 inserted by FC2 system


close
inserted by FC2 system